転職先はブラック企業3話はこちら
突然の 人事異動!理由とは?
ブラック企業に勤め始めてから2ヶ月。ビルの共用スペースで頭を洗うことも、トイレの中で5分仮眠してリフレッシュすることにも慣れてきた。
ちなみにブラック企業の毎日がどんな感じだったかというと、 会社に住んでいたり、流しで頭を洗っていたくらいである。
慣れてきたものの、さすがベンチャー企業。物事の動くスピードが早い。早すぎる。早すぎて、1ヶ月後にはどんな仕事をしているか、誰にもわからないのだ。
人事異動の理由 1:制作部門に異動
2ヶ月目のある日、僕は顧客のウェブサイトを作る部署に異動になった。もともとデザインとかが好きな自分にとっては非常に嬉しいことであった。
同じ部署には女の子もいて、男女比率は1対1。ゴージャス!オアシス!カタルシス!!
人事異動の理由2:女の子だけホワイト待遇
しかし、女の子たちを抱えるからこそ、生まれてくる問題もあった。彼女らは、早く帰りたがるのだ。
こちらが朝3時までウンウンうなって作る企画書を悠長に10時近くから読み始め、膨大な作業量には簡単に「多い。ムリ」と言い放ち、こちらを困惑させる。社長も女には甘い。よって、被害を被るのは前線に立つ屈強な男性社員だ。またの名をソルジャーとも言う。
我々は憤慨してはいけない。会社のために、ただひたすらに矢面にたち、女どもが残した作業量の責め苦をクライアントから受けるのみ……!
人事異動の理由3:案件が多すぎる
さらに言えば、抱えている案件が多すぎるのも恐ろしいものだ。常に60案件ほどがプールされている状態なのだ。
この状態が導き出すのは、「突如、クライアントから案件Aについて尋ねられるが、どんな状態だったかをすぐに思い出せない」という地獄である。携帯が鳴るたびに恐怖だ。電話がかかってきたら、とりあえず折り返しにさせてもらう。それから膨大なファイルの山から対象となるデータを引っ張り出し、それだけ進んでいるかをまず「思い出す」。そう、まずは「思い出すことから始める」のだ。
そして、クライアントの声色を伺いながら、状況を報告する。数が数だから、クライアントの要望を汲み取れていないこともある。
その時は、一発でクレームだ。まるで、いつ爆発するかわからない不発弾を常に60発運搬しながら、前の見えない霧の道を進むような感覚。それも匍匐前進でくらいの歩みで。
もちろん即答できるような案件も存在する。でも、不安なのだ。確認をしなければ。常に日の出を見つめて働いている自分たちにとっては、自分の記憶なんて泥酔状態のそれに等しい。だから、常に途方もなく不安なのだ。
風呂に入れないことで、僕は発酵した酢味噌のようなにおいを漂わせながらオフィス泊まりの日々を過ごした。