僕は昔学歴に縛られていた哀れな人間だ。だから、頭がいいなら勉強するのが当然だと思っていた。
しかし、宮崎に移住して地場産業で働いてみて、「自分をバカ」だと言っている子の中にも、「あれ、頭よくね?」と感じる子が多いということに気づいた。
頭がいいのに勉強できない女の子
僕は職場で、地元の高卒の子と働いた。名前をUさんという。頭の回転が早く、いろんな人にかけあって漫才師のようなやりとりを見せてくれた。しかも美人。
その子がある日、
「私勉強できないもん」
と言っていたのを聞いた。
「だってUちゃん、○○高校だもんね。一番のバカ高校なんだし」
と誰かが言う。家に帰って調べてみると、本当だった。彼女の高校の偏差値を調べると、僕の高校のそれと40も開きがあった。
驚いた。
Uさんは先述の通り、バカではない。少なくとも僕は、頭がいいと思っていた。漫才師のような高速のやりとりができるのだから、思考力に問題があるとは思えない。
後日、勉強の話を聞いているとき、Uさんからこんな話を聞いた。
「本を読んでいるとうんざりしちゃうんです。教科書とか読む気にならない」
さらに、
「みんな私の事諦めてたし、そんなに勉強しろとも言われてなかったから」
とも。
彼女にとって、特に勉強する雰囲気にならずに受験が終わっていたという。
the most beautiful flowerの意味がわからない女の子
また、ある定時制出身の女の子と話していた時のこと。そのときは造花を入れるボックスにいたすら値段を貼るという地味な仕事をしていたのだが、そこに書いてある英文に彼女は着目した。
「これ、何ていう意味ですけぇ?」
ボックスには「the most beautiful flower」とある。なるほど、比較・最上級を忘れてしまったんだなと思い、
the mostに形容詞をつけると一番~~という意味になるんだよ
と返した。すると、
そうなんですね~!じゃあ、このfで始まるやつって何です?
と聞かれ、おお、と思った。フラワーだよ。花だよ。多分聞いたことあるでしょ。そう言うと、なるほど、これがフラワーですね!と納得してくれた。ちょっと驚いた。
しかし、じゃあこの子が「アホの子」なのかと言うと、全くそんなことはない。むしろ、僕よりも圧倒的に気がきく。それに仕事が早い。コミュニケーション能力も高く、説明がきわめて上手だ。
思考レベルが高いのに、単純に勉強していない層が多いのではないかという結論に至った。
雰囲気に流されて「勉強する」か「勉強しない」か
「雰囲気に流される層」は、都内では勉強している層となるが、地方では勉強しない層となるのかもしれない。
潜在的な学力はきちんとあるにも関わらず、勉強をする気になれず、勉強への苦手意識をもってしまうのだろう。
この雰囲気って結構大事で、これだけで本当に勉強するしないが分かれるのだと思う。
勉強することが全てではないけど、勉強しない雰囲気のせいで、本来勉強できる子の未来の選択肢が狭まるのは損失だ。
冒頭の女の子のUさんも、
しょうきちさんて大卒なんですね。私も勉強できたらなあ……
と言ってくれることがあった。勉強に対するコンプレックスはきっとあるのだろう。
大卒が全てではないし、高卒だからどうということではなく、未来の選択肢を広めるために、自分に自信をもたせるために、勉強は必要なのだ。
そして、その装置となる雰囲気作りを、駆け出しの教育者としては頑張らねばならない。