ども!
しょうきちです。
コンセプトとは何で、どう作ればよいのか?
最近、これから移住する人や、長い目で見て独立を考えている人から事業創造について相談をもらえる機会がちょこちょこある。
まだ自分は駆け出しでしかないので、浅学を吹聴して法悦の相とはまさにこのことではあるが、頼ってもらえることがものすごくうれしいので少しでも価値のなる情報を提供したいと思っている。
そこで、今回は元博報堂政策部長の高橋氏の著作からストーリーメイキングとコンセプトメイキングについて学んでみた。
コンセプトとは何か?→既成概念の変化を起こすもの
さて、コンセプトとは何なのか?
世の中にはびこるアマチュア慈善団体や学生団体とかが「それっぽいこと」をコンセプトとしてぶちあげたりしているが、「じゃあ、コンセプトっていったいなんですか?」と聞くと顔をこわばらせて閉口したりする。
ここで、コンセプトについて説明しておこう。
- コンセプトとは何?→商品などが内包する「概念」
- コンセプトとはどうあるべき?→既成概念を駆逐する「新しい概念」であるべき
コンセプトそのものの意味は「概念」である。商品とか、サービスに込められた思いである。商品を定義づける説明とかうんちくとかその他ウンヌンカンヌンである。コンセプトそのものの説明は、これで終わってしまう。
だが、コンセプトはうんちくをだらだら述べて自己満足するためのものではない。商品を新しく出すには、新しい価値が必要である。コピーなら、既存の商品に勝つことはできないからだ。だから、新商品には新しい価値を込める。そのときに、どんな価値が必要かを「概念として」まとめねばならない。これがコンセプトだ。
だから、コンセプトとはただのうんちくに終わらず、既成概念の変化を起こす概念であるべきだ。元からある考えを駆逐するために、製品をつくりあげていく中での「指標」である。今までにないものを作り出すときに迷わないための「羅針盤」としてあるべきなのだ。
おそらく、「コンセプトとは何か?」と聞いても様々な、雑多な答えが返ってくる理由として、
- 「コンセプト」事態の意味を理解していない
- 「コンセプトとは何か」と「コンセプトのあるべき姿は何か」を混同して混乱している
のではないかと思う。
コンセプトの基本形
コンセプトとは何かを説明したところで、コンセプトとは何で構築されているかを語ろう。
コンセプトとは、下記の4要素で成立する。
- 「現状を認識する」→企業のフィールド把握
- 「時代を洞察する」→時代のフィールド把握
- 「発見する」→アイディアの閃き
- 「言葉化する」→コンセプト化
事例:アサヒスーパードライのコンセプト
事例を出したほうがわかりやすいので、アサヒビールのスーパードライの例を出してみよう。
現状認識:自社の課題などを認識し、コンセプトの素地をつくる
-
アサヒビールのシェアは10パーセントを切っており、非常に苦しい状況
-
新しい商品で市場を握りたい
-
ビールの本質的な味を再構築しなければ、勝ち目はない
-
味という概念を変えたい
時代の洞察:世間は自社に関する情報にどう反応しているかを見極める
- ビール市場での競争が激しく、キリンの独走状態
- イメージ戦争、タレント勝負など、企業の体力勝負が続いている(じり貧に……)
- ビールの味の要素で、何が重要なのかが不明確
- 生活者に味の基準が提案されておらず、イメージでビールを選ぶ時代
発見:アイディアを「発酵」させ、コンセプトに落とし込む
- ビール本来のうまさの基準作り
- おいしさの基準の提案、リアリティのある商品の開発
コンセプト:世間がもとめていて、自社だからできる、新しい価値提供のかたち
- コクがあるのに、キレがある
以上である。
事例:ポラロイドカメラのコンセプトとは
今度は「ポラロイドカメラ」のコンセプト自体について考えてみよう。
ポラロイドカメラとは、フィルムを使ったアナログカメラの一つ。一枚ずつ撮影して、その場ですぐに現像出来るタイプのカメラだ。
ポラロイドカメラのコンセプトとは、「10秒間を売る」である。写真を提供するという価値であれば、ほかのどんなカメラでもいい。でも、ポラロイドが提供してくれるのは、10秒間で写真を提供できるという価値だ。
強いコンセプトの要素
強いコンセプトとは、下記の6つの要素で定義される。
- 新しい価値観
- 他との差別化
- 時代の予感
- 戦略性
- 喜び、幸せの創造
- ブランド
コンセプトに新しい価値観があるか
- 人の関心事にあって、欲求にあって、はじめて価値が認められる
- 水は乾きを潤すのが価値だが、コモディティ化してしまっている
- 重要な思考法「実質的価値+情報的価値=総合的価値」
- 水に情報的価値を加えることで、水+美容、水+健康のような新しい価値観をつくれる
コンセプトに他との差別化があるか
- 優劣を競うのではなく、違いを生み出す時代
- 相対的な価値ではなく、絶対的価値が重要
- 独自の存在意義をつくる
コンセプトに時代の予感があるか
- 新しくなりそう、面白くなりそう、変わっていきそうという人の感性を刺激する
- 新しい時代の空気を感じる提案性を出す
- 需要対応型から需要創造型へ
コンセプトに戦略性があるか
- コンセプトメイキングをすることは、変化をうながすこと
- つまり、概念を変え、相手の行動を変えていくこと
- コンセプトは行動の中心にある考えとして、行動を伴って評価されるべきもの
- 戦術的でなく、戦略的に考える(単純な機能改善ではクリエイティブと言えない)
- 上流工程から下流工程までを一本化して考える(企画→デザイン→生産→流通→販売)
コンセプトが人の幸せや喜びにつながるか
- 客観的なモノの豊かさから、主観的なココロの豊かさへ
- 高品質なだけでは意味がない。なんのための高品質化を考える
- 奥底に、人々の喜びを願う気持ちがあるか
ブランドにつながるか
- 商品も企業も、持続的発展が究極の目的
- 持続的な発展のために、ブランド化が必須
- 刺激型(プロモーション的)から関係型(ブランド的)へ
シャネルのコンセプトで考える
強いコンセプト、強いブランドといえばファッションブランドを思い浮かべる人も多いと思う。なので、シャネルを例にとって考えてみよう。
果たして、シャネルは上記の「強いコンセプト」の要素に合致しているのだろうか。
事前情報として、シャネルについての予備知識を。
20世紀に入っても、ヨーロッパの女性はコルセットできつく胴回りを締め、足全体が隠れ、裾に向かって膨らむように針金でパターンされた洋服を着ていた。
これは男性優位のヨーロッパ社会で、男性が求める女性の服であって、女性はこのことに対して(またはそれ以外の生活全般に対して)男性に従順であることを求められていた。
つまり女性の服は女性のための服ではなく、男性のための服であるという社会背景があった。
それをガブリエル(ココ)・シャネルが革命した。
彼女はこの革命をコンセプトにした。
コルセットを取り、機能性に優れたジャージなどの素材を使い、楽な服や女性の体のラインが出る服を作った。
女性のための服。それが「女性の服の解放」というコンセプトに結びついた。
当時の男性優位社会では、女性の服は男性が買い与えるものであって、女性が買うものではなかった。したがって、デザインは男性が見て喜ばしいものとなり、女性の目線は反映されてこなかった。その上、女性に高級な服を着せることは男性にとってのステータスであり、自己顕示欲を満足させるための道具として機能していた。
その時代のアンチテーゼとして、シャネルのコンセプトはこうはたらいている。
- 新しい価値観→女性による女性のための女性の服
- 他との差別化→黒と白のカラー、素材
- 時代の予感→女の時代、女性の服の開放
- 戦略性→デザインはもとより、店舗デザインにもこだわり
- 喜び、幸せの創造→女性が着てうれしい、着やすい、美しい
- ブランド→100年続く、女性のあこがれ
見てみると、時代の動きを完全にとらえたコンセプトだと思う。世界大戦が始まろうとして、女性の社会進出が進む中、生まれるべくして生まれたブランドだ。そして、「女性による女性のための女性の服」「女性の解放」というコンセプトが、今では当たり前になっていることにも気づく。
強いブランドには強いコンセプトがあり、それは時代をとらえ、新しい常識をつくるものだとわかった。
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